「課題が出来ない」→「出来ない子」じゃない

最近、低学年のレッスンで感じる事。


まだ初めて4ヵ月の1年生。


入会時、お母さまから、慎重なんです、とお聞きしていたけど


確かに、はじめの数ヵ月は


新しい課題に取り組む気持ちが持てなかったり、


自分から積極的に弾こうとしたりお話ししようとしたり、ということもなく。



左手を動かそうとしても「あっ、できない」と感じると、すぐにやめてしまい


3か月ほどひたすら右手で簡単に弾けるものを繰り返すのみだった。




それが


・今の出来そうだったね!ちょっともう1回やってみない? と、励まし続け


・はじめて出てきた難しいことにも、頑張って取り組めたね! と、ほめて


・自分から話し始めてくれた時は、ピアノに関係ないこともしっかり聴き続ける


ということを繰り返したら



最近では、自分からどんどん楽譜を読み


宿題じゃない曲にも取り組み、両手奏の壁を越えつつある。




まだまだ


「これはちょっと難しい(ので、無理。と、取り掛かるのをやめる)」


「これは、ちょっと疲れて痛いので、指が曲がらなくなる可能性がある」


など、まぁ平たく言えば「言い訳」するんだけど、それもまた微笑ましくかわいらしい。




誰しも


「自分は、この課題が出来ない」


という現実を見るのは嫌で


「この課題が出来ない」→「自分は出来ない子」


という、間違った回路を、はじめに持っている子が多い気がする。



「出来ない子」なんていなくて


「課題がまだ出来ない」だけなのに。



もっと言えば


「まだ、出来るようになるまで、練習していないだけ」


なのに。




あと


「やってみて、失敗してしまう」


というのを、みんなとても嫌がる。


まぁ当たり前といえば当たり前だけど。



でも


「やってみたらきっと失敗するだろう。だからやらない。」


という心の中に築かれた巨大な城壁を取り除くため


少しずつ少しずつ、コミュニケーションを重ねて信頼してもらって。


私の言葉がすんなり自然と届くように、その子の気持ちを想像しながら


チャレンジに向き合えるように寄り添って励まし続けて。



自分がちょっとでも出来るようになった!という経験を自信に変えてもらい、


次第に、次のレベルに抵抗なく向き合えるようになって


いつの間にか、自分から、難しいことに夢中でチャレンジしていく、その過程を見るのが楽しい。





で、たいがい、あの手この手で励まし続けて、やっとチャレンジして


いざ出来るようになると


わりとみんな


「私は天才かもしれない」


「私は、結構、他の子より出来るかもしれない」


みたいなことを言うのが、本当に面白いし、かわいい、そしてちょっと切ない。


(3年生くらいまで、かなり多くの子が、そんな感じ)




「他の子より、突出して良くできる天才」


って思いたいんだよね。




でも、そこはやっぱり


「自分は、他の子より出来る子だから、出来た。」


「自分が天才だから、出来た。」


じゃ、ダメなんだ。





「自分は、出来なかったことにチャレンジしたから、出来たんだ。」


「自分は、練習したから、出来たんだ。」


という、思考回路を、少しずつ少しずつ積み重ねて定着させていく。


(人と比較して出来る&私天才かも、のくだりは、否定はしない。

因果関係は、勇気・努力・練習と結び付け直しておく)


じゃないと


「あれ?他の子も出来てる、私は出来る子じゃなかったんだ。」


「あれ、出来ない、私はやっぱり天才じゃなかったんだ。」


で、


「私は出来ない子」


に後戻り。


(よくないパターンだと、あの子は私より進んでないから、私の方が出来る子だもん。

と、マウンティングして、なんとか「自分は出来る子」を確立しようとする)




私は、色んな方向から、様々な態度、たくさんの言葉、の、シャワー?空気感?で


間違った設定に戻らないように


「正しい方法で、出来るまで練習を続ければ、出来るようになる」


というシンプルな事実を、その子の腑に落ちるように伝え続けるのみ。



最終的には、その子の中にある


「成長したい、出来るようになりたい」


という気持ちに、邪念なく取り組んで、行動することができるように


見守ってあげる、背中を押してあげる、


知っていることはシェアしてあげて、一緒に考えて、工夫して、というのを


根気よく続けていくしかない。




夢中な様子を見ることが出来たり、高度な質問をしてくれたり


出来るようになった時に喜びで満ち溢れている様子を見るのは最大のご褒美。



2,3年生くらいまでは、その子の思考が、言葉の端々に駄々洩れなのが凄く面白い。


その言葉から、その子の気持ち、まだ自覚すらしていない本心を読み取って


勇気を持てるように寄り添ってあげる。




結果を出すことを、急かされることが多い世の中で


ピアノで結果が出ないとママも子供も焦る気持ちはわかるけれど


伸びるのは結局、他人軸の結果にフォーカスした時じゃなくて


今、直面している課題を出来るまでやろう、と向き合えた瞬間。




じっくり自分と向き合うことを、ピアノを通して学んでくれたら


そして自分を信じる経験を、積み重ねていってくれたら


そして、美しい物に没頭する喜びを味わい、分かち合えるようになってくれたら


と思います。

plaisir

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